だんごむしは昆虫じゃない!その意外な正体
庭の植木鉢をどかした時や、湿った落ち葉の下で、丸くて黒光りする、あの独特の生き物が、慌てて体を丸める。子供の頃、誰もが一度は触れ合ったであろう、この「だんごむし」。多くの人が、これをカブトムシやアリと同じ「昆虫」の仲間だと思っていますが、実はその正体は、全く異なります。だんごむしは、昆虫ではなく、エビやカニ、あるいは深海に棲むダイオウグソクムシなどと同じ、「甲殻類」の仲間なのです。彼らは、遥か昔、海で生活していた祖先が、陸上での生活に適応した、非常に珍しいグループの一員です。その証拠に、彼らは昆虫のように気門で呼吸するのではなく、「えら」に似た器官で呼吸しており、生きていくためには、常に高い湿度が必要不可欠です。体が乾燥してしまうと、呼吸ができなくなり、死んでしまいます。これが、彼らが日中の乾いた場所を避け、常にジメジメとした暗い場所に身を潜めている、最大の理由です。また、彼らの主食は、昆虫のように生きた植物の葉や花ではありません。主に、地面に落ちた枯れ葉や、朽ちた木、あるいは動物の死骸やフンといった、有機物を食べています。そして、それらを分解し、栄養豊富な土壌へと還すという、自然界の「分解者」としての、非常に重要な役割を担っているのです。この観点から見れば、だんごむしは、生態系を支える「益虫」と言うことができます。しかし、そんな彼らも、一度、人間の生活空間に大量発生し、家の中にまで侵入してくるようになると、その評価は一変します。益虫と害虫の境界線は、時に、彼らがどこにいるか、という、ただそれだけの問題で決まってしまうのかもしれません。まずは、この小さな隣人の、意外な正体と、その本来の役割を、正しく理解することから始めましょう。