それは、私がガーデニングに夢中になっていた、ある年の梅雨時のことでした。家の北側にある、日当たりの悪い小さなスペースを、シェードガーデンにしようと思い立ち、ホスタやヒューケラといった、日陰に強い植物をいくつか植えました。土壌を改良するために、腐葉土をたっぷりとすき込み、乾燥を防ぐために、株元にはウッドチップを厚く敷き詰めました。今思えば、その行為が、悪夢の始まりを告げるゴングだったのです。最初のうちは、植物も元気に育ち、私は満足していました。しかし、雨が降り続いたある日の朝、私は信じられない光景を目にすることになります。庭に出ようと、リビングの掃き出し窓を開けた瞬間、サッシのレール部分に、おびただしい数の、黒い粒がうごめいていたのです。だんごむしでした。その数、数十匹、いや、百匹は超えていたでしょう。彼らは、雨から逃れるように、家の中に侵入しようと、列をなしていたのです。私はパニックになり、ほうきで掃き出しましたが、掃いても掃いても、庭のどこかから、次々と湧いて出てきます。そして、私は気づきました。彼らの発生源は、私が良かれと思って作り上げた、あのシェードガーデンでした。腐葉土という豊富な餌、ウッドチップという最高の隠れ家、そして梅雨の長雨による絶え間ない湿気。私は、知らず知らずのうちに、だんごむしにとっての、五つ星の繁殖施設を、自らの手で作り上げてしまっていたのです。その日、私は半泣きになりながら、ウッドチップを全て撤去し、殺虫剤を庭に撒きました。そして、植物のためには良かれと思った過剰な湿気管理が、いかに生態系のバランスを崩すかを、身をもって学んだのです。あの黒い絨毯のような光景は、私に、ガーデニングとは、ただ植物を育てるだけでなく、その周りの環境全体を、健全に管理することなのだと教えてくれた、忘れられない教訓となりました。
私の家がだんごむしに占拠された日