家の周りで大量発生すれば、不快害虫として駆除の対象となるだんごむし。しかし、彼らを一方的に「悪者」と決めつけてしまう前に、私たちが忘れてはならないのが、彼らが持つ「益虫」としての一面と、子供たちの自然科学への興味を育む、教育的な存在としての価値です。だんごむしは、その主食が腐った落ち葉や枯れ木であることから、自然界において「分解者」という、非常に重要な役割を担っています。彼らがいなければ、森の地面は、分解されない落ち葉で埋め尽くされてしまうかもしれません。彼らは、有機物を食べて、栄養豊富なフンをし、それを微生物がさらに分解することで、豊かな土壌を作り出す、という、大きな生態系のサイクルの一部なのです。この観点から見れば、彼らは庭の土を健康にしてくれる、ありがたい存在とも言えます。そして、もう一つ、彼らが持つ大きな価値が、「子供たちの最高の遊び相手」である、ということです。手のひらの上で、危険を感じてくるりと丸まる、そのユニークな防御行動。迷路を作って、その中を歩かせてみる。オスとメスを見分けたり、脱皮の様子を観察したり。だんごむしは、子供たちが、身近な自然の中で、生命の不思議や、科学的な探究心を学ぶための、最高の生きた教材となり得ます。彼らは、毒もなければ、人を刺すこともない。安全に、直接触れ合うことができる、数少ない生き物の一つです。もちろん、家の中に侵入してきたり、植物の苗を食い荒らしたりするようであれば、適切な対策は必要です。しかし、庭の隅で、数匹のだんごむしが暮らしているのを見つけたなら、それをすぐに駆除してしまうのではなく、子供と一緒に、その生態を観察してみてはいかがでしょうか。「この虫は、森のお掃除屋さんなんだよ」と、その役割を教えてあげる。害虫と益虫の境界線は、時に、私たち人間の視点一つで変わります。だんごむしとの付き合い方を通して、私たちは、自然との、より豊かで、寛容な関係性を、学ぶことができるのかもしれません。
だんごむしの益虫としての一面と、子供との付き合い方