家の壁や玄関先で、細長い貝殻を持つキセルガイの姿を見かけると、「一体、どこからやって来たのだろう」と不思議に思うかもしれません。彼らは、ある日突然、空から降ってくるわけではありません。あなたの家の周りに、彼らが好み、そして繁殖するための「条件」が、完璧に揃ってしまっているのです。キセルガイが大量に発生する、あるいは家の中にまで侵入してくる原因は、彼らの生態的な弱点と深く結びついています。キセルガイは、カタツムリやナメクジと同じく、乾燥に極めて弱い生き物です。そのため、彼らが安心して生活できるのは、常に湿度が高く、直射日光が当たらない、ジメジメとした暗い場所に限られます。あなたの家の周りを見渡してみてください。例えば、家の北側の、日が当たりにくい外壁。雨水で常に湿っており、うっすらと緑色のコケが生えていませんか。あるいは、庭に置かれた植木鉢やプランターの裏側、水抜きのために置かれたブロックの下。こうした場所は、昼間の乾燥から身を守り、餌となるコケやカビも豊富な、彼らにとっての最高のシェルター兼レストランです。また、落ち葉が吹き溜まり、腐葉土化しているような場所も、格好の隠れ家兼産卵場所となります。つまり、キセルガイが家の周りに多いということは、あなたの家が「湿気が多く、風通しが悪く、コケや有機的な汚れが溜まっている」という、環境悪化のサインなのです。家の中にまで侵入してくる場合も、その原因は同じです。壁のひび割れや、サッシの隙間、あるいはエアコンの配管の隙間などを通って、より高い湿度を求めてやってきます。浴室や洗面所、キッチンのシンク下などで発見されるのは、そのためです。キセルガイの発生は、単なる不快な虫の問題ではありません。それは、あなたの家が、カビやダニ、あるいはムカデといった、より深刻な健康被害をもたらす他の害虫にとっても、住みやすい環境になっていることを示す、生きた「警告」なのです。