家の壁や庭で、細長い、貝のような、あるいは虫のような生き物を見つけた時、私たちはつい「キセルガイだ」と早合点してしまうかもしれません。しかし、同じような、湿った暗い場所を好む生き物の中には、キセルガイとよく似た、あるいは混同されやすい、いくつかの異なる種類の生き物が存在します。敵の正体を正確に見極めることは、適切な対処法を知る上で非常に重要です。まず、最もよく間違われるのが、「ナメクジの幼体」です。特に、生まれたばかりの小さなナメクジは、白っぽく細長い形をしており、一見すると殻のないキセルガイのようにも見えます。しかし、ナメクジは成長すると、より平たく、大きくなり、何よりも植物の葉などを積極的に食害するという点で、キセルガイとは決定的に異なります。植物に食害の跡があれば、それはナメクジの仕業です。次に、その見た目から強烈な不快感を与えるのが、「コウガイビル」です。名前には「ヒル」と付きますが、血を吸うことはなく、プラナリアの仲間です。黒や茶色で、平たく、ぬめりのある体を持ち、頭部が特徴的なイチョウの葉や、半月のような形をしています。体を伸ばすと数十センチになることもあり、その異様な姿から、多くの人がパニックになりますが、彼らはナメクジなどを食べる肉食性で、人間には無害です。そして、たくさんの脚を持つ「ヤスデ」も、その細長い体から混同されることがあります。ヤスデは、円筒形の体に無数の短い脚を持ち、ゆっくりと直進します。彼らも腐葉土などを食べる分解者で、危険はありません。これらの生き物とキセルガイを見分けるための、最も確実なポイントは、やはり「殻の有無」です。キセルガイは、どんなに小さくても、必ずその背中に、細長い螺旋状の「殻」を背負っています。遭遇した際は、パニックにならずに、まずはその特徴を冷静に観察してみてください。殻があればキセルガイ、なければナメクジかコウガイビル、たくさんの脚があればヤスデ。正しい鑑定が、不要な恐怖からあなたを解放し、適切な次の一手へと導いてくれるのです。