それは、三日間の短い旅行から帰ってきた、蒸し暑い夏の日のことでした。玄関を開けた瞬間から、何となく鼻につく甘ったるいような、腐ったような異臭。まさかと思いつつ、臭いの元を探ってたどり着いたのは、キッチンの隅に置かれた蓋付きのゴミ箱でした。旅行前、バタバタと家を出る際に、生ゴミを出し忘れていたのです。私は覚悟を決めて、息を止め、ゴミ箱の蓋を開けました。その瞬間、目に飛び込んできた光景に、私は声にならない悲鳴を上げました。ゴミ袋の口の隙間や、ゴミ箱の底に、おびただしい数の白い小さな虫が、うごめいていたのです。それはまさしく、地獄絵図でした。パニックで頭が真っ白になりながらも、震える手でスマートフォンを掴み、「ゴミ箱 白い虫」と検索。すぐに、その正体がハエの幼虫、通称「ウジ虫」であることを知りました。そして、駆除方法として「熱湯が効果的」という情報を得たのです。私は、人生で初めて、戦う決意をしました。ゴム手袋を二重にはめ、マスクをつけ、ゴーグルまで装着。やかんで沸かした熱湯を手に、再び問題のゴミ箱と対峙しました。蓋を開け、ためらわずに熱湯を注ぎかけると、うごめいていた虫たちの動きがピタリと止まりました。私はさらにシャワーの熱いお湯を浴びせかけ、完全に駆除できたことを確認すると、ゴミ箱の中身を大きなビニール袋に二重、三重にして固く縛り、外のゴミ置き場へと運びました。しかし、戦いはまだ終わりません。空になったゴミ箱を、私は泣きそうになりながら何度も洗剤とブラシで洗い、最後に塩素系漂白剤で消毒しました。あの日の強烈な体験は、私に大きな教訓を与えてくれました。それは、「生ゴミを侮るな」ということです。それ以来、我が家では生ゴミの水分を徹底的に切ること、夏場は小袋に入れて冷凍庫で保管し、ゴミの日にまとめて出すというルールが徹底されています。あの地獄を二度と繰り返さないために。
ゴミ箱を開けたら地獄…私のウジ虫駆除体験記