自分でアシナガバチを駆除しようとして失敗したある家庭の事例を振り返ると、そこには共通する「油断」と「誤解」が浮かび上がってきます。築十年の戸建てに住むAさんは、ある日曜日の真昼間、ベランダの手すりの下にゴルフボール大の巣を見つけました。彼は「まだ小さいし、すぐ終わるだろう」と考え、普段着のTシャツ姿のまま、家にあったハエ・蚊用の殺虫スプレーを持ってベランダに出ました。これが第一の過ちです。ハエ・蚊用のスプレーは蜂に対しては致死量が不足しており、かえって蜂を興奮させるだけの刺激物になってしまったのです。Aさんがスプレーを吹きかけた瞬間、巣にいた二匹の蜂が猛烈な勢いで飛び出し、丸出しだった彼の腕を直撃しました。激痛に驚いたAさんはその場から逃げようとしましたが、パニックになってベランダの段差に足を取られ、転倒して足を捻挫するという二次被害まで受けてしまいました。さらに、第二の失敗は時間帯の選択です。昼間の駆除作業は、その時に巣にいなかった他の蜂たちが、数分から数十分後にエサを持って戻ってくる「戻り蜂」のリスクを無視していました。刺された傷の手当てをしている最中、開けっ放しにしていた窓から戻ってきた蜂が室内に侵入し、家族全員が避難を余儀なくされるという大騒動に発展したのです。この事例から学べる教訓は、自分で駆除を行うなら「専用の道具」と「適切なタイミング」を絶対に軽視してはいけないということです。一般家庭用の中途半端な装備では、自然界の戦士である蜂には太刀打ちできません。また、蜂に刺された際の初期対応を誤ると、腫れが数週間も引かないといった後遺症に悩まされることもあります。Aさんの場合は幸い軽症で済みましたが、もしアレルギー体質であれば救急車を呼ぶ事態になっていたでしょう。自分で駆除をするということは、こうした全てのリスクを自分の責任で背負うということです。安易な気持ちで挑むのではなく、もしもの時の緊急連絡先を確認し、万全の防護体制を整えてから臨む。この当たり前の準備を怠ったことが、今回の悲劇を招いたのです。失敗事例は、次に挑戦する人にとっての貴重な教本です。他人のミスを自分への警告として受け止め、慎重の上にも慎重を期す姿勢こそが、自分自身で巣を駆除するための絶対条件となります。