新しい生活を始めるために新居へ引っ越す際、家具や荷物を運び入れる前にまず行うべき最も重要な準備の一つがバルサンを焚くことです。一見きれいに清掃された空室であっても、前の住人がいた頃のゴキブリの卵が隠れていたり、空室期間中に排水管やわずかな隙間から新たな個体が侵入していたりする可能性は十分にあります。何もない状態の部屋でバルサンを使用することには、居住中にはない多くのメリットがあります。まず、最大の利点は事前の準備が極めて簡単であるという点です。家具や家電が一切ないため、薬剤がかかってはいけないものをビニール袋で覆う手間が省け、部屋の隅々まで煙が遮られることなく行き渡ります。押し入れの奥やキッチンのシンク下、クローゼットの内部まで、何一つ障害物がない状態で薬剤が浸透するため、潜伏している害虫を逃さず一網打尽にできます。また、引越し後に家具を配置してしまうと、その重い家具の裏側がすぐにゴキブリの隠れ家になってしまいますが、入居前にバルサンを焚いておけば、そのような「最初からいる」個体を排除した状態で生活をスタートさせることができます。万が一、前の住人が残していった卵が孵化していたとしても、幼虫の段階で駆除できるため、入居後に突然巨大な個体と遭遇するという悲劇を未然に防げます。さらに、バルサンを焚いた後に掃除機をかけ、床を拭き掃除することで、部屋を真の意味でリセットし、清潔な状態で自分の大切な荷物を運び入れることができます。引越し作業は非常に忙しく、ついつい防虫対策は後回しになりがちですが、一度荷物を入れてしまうとくん煙剤を使うハードルは格段に上がります。精密機器の養生や食品の移動など、生活が始まってからでは数倍の手間がかかるからです。新居での第一歩を心地よく、かつ安心して踏み出すために、入居前の数時間をバルサンに費やすことは、その後の数年間におよぶ生活の質を左右する賢明な投資と言えるでしょう。真っさらな部屋で、清々しい空気と共に新生活を始めるための、これが最も確実な儀式なのです。