家の中でふと床に目を落としたとき流れるような動きで隙間へと滑り込む銀色の小さな影を見たことはないでしょうか。もしその影が魚のようにくねりながら移動していたのならそれはシルバーフィッシュと呼ばれる昆虫かもしれません。日本ではセイヨウシミや単にシミとも呼ばれるこの虫はその名の通り全身が銀色の鱗粉で覆われており光を受けると金属のような光沢を放ちます。多くの人がその姿に不快感を抱き発見した瞬間に得体の知れない恐怖を感じるものですが彼らの生態を深く知ることでなぜ彼らが私たちの住処に現れるのかそして彼らがどのような生き物なのかを冷静に理解することができるでしょう。シルバーフィッシュは昆虫の中でも非常に原始的なグループに属しており翅を持たない無変態の昆虫として知られています。つまり彼らは卵から孵化した幼虫の段階から成虫とほぼ同じ姿をしておりサナギになることなく脱皮を繰り返して成長していくのです。この特徴は彼らが太古の昔からほとんど姿を変えずに生き延びてきた生きた化石であることを示唆しており生物学的な観点からは興味深い存在でもあります。しかし生活空間を共有する私たち人間にとっては彼らの生命力の強さは厄介な問題となります。彼らの寿命は昆虫としては異例の長さで環境が整っていれば七年から八年も生きることがあります。一般的な昆虫の寿命が数週間から数ヶ月であることを考えると彼らがいかに長寿であるかがわかります。さらに驚くべきことに彼らは飢餓に対して極めて強い耐性を持っており水さえあれば一年近く何も食べずに生存することが可能です。この驚異的な生存能力こそが一度家の中に侵入されると完全に駆除することが難しい理由の一つとなっています。彼らは基本的には夜行性であり昼間は壁の隙間や家具の裏本棚の奥床下の暗がりなどに潜んでいます。そして人間が寝静まり周囲が暗くなったのを見計らって活動を開始し餌を求めて徘徊するのです。彼らの主食は炭水化物であり特にデンプン質や糖分を好みます。自然界では枯れ葉や樹皮などを食べていますが人間の家屋内では紙類や糊や衣類の繊維や食べこぼしさらには抜け落ちた髪の毛やフケまでもが彼らの食料となります。特に古本や掛け軸ダンボールなどは彼らにとって格好の住処兼食料庫となり得るため長期間放置された納戸や屋根裏部屋などはシルバーフィッシュにとっての楽園となってしまうのです。また彼らは湿度の高い環境を強く好みます。湿度が七十五パーセントを超えるような場所では彼らの活動が活発になり繁殖力も高まります。日本の高温多湿な気候は彼らにとって非常に住みやすい環境であり梅雨の時期や結露が発生しやすい冬場などは特に注意が必要です。風呂場や洗面所キッチンなどの水回りで彼らを見かけることが多いのはそこに水分と適度な隠れ場所があるからに他なりません。彼らの動きは非常に素早く危険を察知すると瞬く間に狭い隙間へと逃げ込みます。その動きがあまりにも滑らかで魚が泳ぐようであることからシルバーフィッシュという英名が付けられましたがこの逃走能力の高さもまた駆除を困難にしている要因です。
銀色に輝く神出鬼没な害虫シルバーフィッシュの生態と正体