代々続くお米屋の店主として、何十年もお米と向き合ってきた私がお客様に一番に伝えたいのは、お米につく虫を過剰に恐れる必要はないけれど、決して侮ってはいけないということです。昔の人はお米に虫がわくのは美味しい証拠だと言いましたが、現代の清潔な食卓ではやはり歓迎されない存在でしょう。虫がつくのを防ぐ最大の秘訣は、とにかく「溜め込まないこと」と「風を通すこと」です。最近は特売で十キロ、二十キロとまとめ買いをされる方が多いですが、特に少人数のご家庭では使い切るまでに時間がかかり、その間に虫たちの楽園が出来上がってしまいます。お米屋としては、二週間から二十日程度で食べきれる量をこまめに買いに来ていただくのが、虫対策としても味の面でも一番のおすすめです。保存場所としてよく見かけるシンクの下は、実は最も避けてほしい場所の一つです。湿気がこもりやすく、温度も上がりやすいため、虫にとってはこれ以上ない好条件が揃っています。もしどうしても冷蔵庫に入らない場合は、なるべく床から離れた、風通しの良い涼しい場所を選んでください。また、昔ながらの桐の米びつは調湿効果があって素晴らしいものですが、接合部のわずかな隙間に卵が残ることがあるため、年に一度は天日でしっかりと干して清掃することが大切です。意外な盲点なのが、お米の計量カップです。カップに付着したヌカのカスが虫を呼び寄せる呼び水になることがあるので、カップもこまめに洗ってください。お客様から「虫がわいたらどうすればいい」と聞かれたら、私はいつも、まずは慌てずにザルでお米をふるうようにアドバイスします。小さな虫は下に落ち、糸を引いた塊はザルに残ります。その後、お米を水に浸すと、虫に食われた軽い粒が浮いてくるので、それを何度も流せば、残ったお米は十分に美味しく食べられます。お米は生き物です。手間をかけて正しく接してあげれば、虫に邪魔されることなく、お米本来の甘みと香りを毎日楽しむことができるのです。私たちプロが守っているお米の鮮度を、ぜひご家庭でも同じように大切に引き継いでいただければと思います。