住宅のメンテナンスや害虫防除の現場において、アリの種類の見分け方は最も重要視されるスキルの一つです。なぜなら、種類によって住居に与える被害の質が全く異なるからです。例えば、木造住宅の土台や柱に甚大な被害をもたらすことで知られるシロアリは、分類上はゴキブリに近い仲間であり、一般的なアリとは体の節の形状が異なります。アリにはくびれたウエストがありますが、シロアリは寸胴な体型をしているのが最大の見分け方です。また、家の周囲で大きな黒いアリを見かけた際、それがクロオオアリなのかミカドオオアリなのかを判断するには、活動する時間帯を確認するのがコツです。クロオオアリは昼行性ですが、ミカドオオアリは夜行性であり、夜間に照明の周りに集まってくる個体がいれば後者の可能性が高まります。庭の芝生を荒らすトビイロシリアゲアリは、腹部が尖ったハートのような形状をしており、威嚇する際にその腹部を逆立てる仕草を見せるため、非常に特徴的です。さらに、近年警戒が必要なヒアリなどの毒を持つ外来種については、体の赤みが強く、複数の大きさが混ざり合って活動している点に注目してください。プロはアリの形状だけでなく、彼らが作る「蟻道」や、吐き出された砂山の形からも種類を推測します。家の中に現れるアリが、ただ食べ物を探しているだけの一時的な訪問者なのか、それとも壁の中に定着しようとしている定住者なのかを判断するには、行列の終着点を特定することが不可欠です。見分けがつかない場合は、セロハンテープで一匹を採取し、白い紙に貼って拡大観察することをお勧めします。胸部に棘があるか、腹柄節が一つか二つかという微細な違いが、そのアリが森林性なのか住宅地を好む種なのかを教えてくれます。こうした知識を身につけておくことで、不要な不安を解消し、真に警戒すべき種が現れた際に迅速かつ的確な対応をとることが可能になります。アリの観察は、住まいの安全を守るための高度な情報収集活動でもあるのです。