実家の片付けを手伝っていた時のことですが、何年も動かされていなかった書斎の古い本棚の奥から一冊の分厚い図鑑を引き抜いた瞬間、私の指先をかすめるように銀色の小さな影が走りました。驚いて手を引くと、そこには一センチメートルほどの細長い虫が、まるで水面を泳ぐ魚のようにスルスルと壁の隙間に消えていくのが見えました。これが噂に聞く紙魚という虫かと直感した私は、その姿の不気味さ以上に、手に持っていた図鑑の無残な姿にショックを受けました。糊が使われていた背表紙が薄く削り取られるように食われており、ページの間には小さな黒い粉のようなフンが散らばっていたのです。私はすぐに家中の大捜索を開始し、まずはすべての本を棚から出して現状を確認することにしました。すると、長年放置されていた場所には数匹の紙魚が潜んでおり、彼らが暗い場所を好み、わずかな隙間さえあればどこにでも入り込んでしまうことを思い知らされました。駆除のために私が最初に行ったのは、掃除機を使って本棚の裏側に溜まっていたホコリを徹底的に吸い取ることでした。驚いたことに、本棚と壁の間に挟まっていた古いカレンダーの裏には、紙魚が脱皮したと思われる透明な抜け殻がいくつも残されていました。紙魚は成虫になってからも一生脱皮を繰り返す珍しい虫だそうで、その生命力の強さに改めて戦慄しました。次に、市販のくん煙剤を使用して、部屋全体の隙間に潜んでいる個体の一網打尽を狙いました。くん煙後は、紙魚が嫌うと言われているシダーウッドの精油を染み込ませたコットンを棚の隅に置き、湿気がこもらないように本と本の間に隙間を作って並べ直しました。また、エサ場となっていた古い段ボール箱もすべて処分し、大切な本はプラスチック製の密閉コンテナに移し替えました。この経験を通じて、本を単に並べておくだけでは害虫を招くことになると痛感しました。あれから数ヶ月、あんなに頻繁に目撃していた銀色の影を見ることはなくなりましたが、今でも定期的に本を動かして風を通し、不自然な隙間がないかチェックするようにしています。あの日出会った銀色の虫は、私の管理の甘さを教えてくれた静かな警告者だったのかもしれません。