専門業者によるベイト工法などの化学的な駆除は、チャバネゴキブリ対策の強力な武器です。しかし、その効果を最大限に引き出し、そして長期的に維持するためには、もう一つの、そして最も重要な武器が必要となります。それが、日々の地道な「清掃」です。なぜ、清掃がそれほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、清掃が、チャバネゴキブリの生存に必要な「餌」と「隠れ家」を、根こそぎ奪い去る行為だからです。プロが設置したベイト剤(毒餌)は、非常に効果的ですが、その周りに、ゴキブリにとってより魅力的な「本物の餌」、すなわち、食べかすや油汚れが豊富に存在していたら、どうでしょうか。ゴキブリは、わざわざ毒の入ったベイト剤を食べようとはせず、目の前のご馳走に群がってしまいます。これでは、ベイト工法の効果は半減してしまいます。日々の徹底した清掃によって、厨房内から餌となるものを完全に排除し、ゴキブリを「飢えさせる」こと。そして、彼らにとっての選択肢を、ベイト剤しかなくさせること。これが、ベイト工法を成功させるための、絶対条件なのです。具体的には、営業終了後の床や壁、調理台の清掃はもちろんのこと、コンロの裏やコールドテーブルの下、棚の隙間といった、汚れが溜まりやすい場所まで、徹底的に磨き上げることが求められます。食材は、必ず蓋の閉まる密閉容器に入れて保管し、生ゴミは、毎日必ず店の外の密閉できるゴミ箱へ運び出します。また、清掃は、ゴキブリの「隠れ家」を破壊する上でも重要です。厨房内の調理器具や備品が乱雑に置かれていると、そこが格好の巣となります。不要なものを処分し、整理整頓を徹底することで、彼らが安心して潜める場所をなくすことができます。清掃とは、単に店を綺麗にするという美観上の問題ではありません。それは、チャバネゴキブリとの戦いにおける、最も基本的な、そして最も強力な「兵糧攻め」という戦略なのです。
チャバネゴキブリ根絶への道、清掃の重要性