ある晴れた五月の午後、ベランダに干していた洗濯物を取り込もうとした私は、物干し竿の支柱の影に隠れるように作られた、直径五センチメートルほどの小さな蜂の巣を発見しました。シャワーヘッドを逆さにしたような独特の形状から、それがアシナガバチの巣であることはすぐに分かりましたが、一匹の大きな蜂が熱心に巣を整えている姿を目の当たりにして、私は恐怖で足がすくんでしまいました。業者に頼むと数万円の費用がかかると聞き、私はなんとか自分で解決できないかと情報を集め始めました。インターネットで調べると、アシナガバチは夜間に活動が止まること、そして専用の殺虫剤を使えば素人でも駆除できることが分かり、私は決死の覚悟で道具を揃えました。購入したのは強力な噴射力を誇る蜂専用スプレーと、自分を守るための白い厚手の雨合羽、そして顔を覆うための防虫ネットです。決行の時間は夜の九時に設定しました。暗闇の中で懐中電灯を直接巣に当てると蜂が驚いて飛んでくると聞いたため、赤いセロハンを貼ったライトで足元だけを照らしながら慎重にベランダへ出ました。静まり返った夜の空気の中、三メートルほど離れた場所からスプレーの引き金を力一杯引きました。シュッという激しい音と共に、白い薬剤の霧が巣を包み込み、一瞬だけ羽音が聞こえましたが、すぐに蜂がポロリと床に落ちる音がしました。私は念のために落ちた蜂の上からも追加で噴射し、すぐに室内に戻って扉を閉めました。三十分ほど置いてから確認に行くと、蜂は完全に動かなくなっており、私はトングで巣を剥がし、蜂と共に二重のゴミ袋に入れて密閉しました。終わってみれば作業時間は実質一分にも満たないものでしたが、あの日感じた心臓の鼓動と緊張感は今でも鮮明に覚えています。小さいうちに対処できたおかげで、被害も費用も最小限に抑えることができ、自分の家を自分で守り抜いたというささやかな自信にも繋がりました。それ以来、私は毎週日曜日の朝に家の周りを一周し、新しい巣が作られていないかチェックすることを欠かさない習慣を身につけています。
ベランダの蜂の巣を自分で駆除した私の実体験記録