本棚から取り出した古い本の背表紙やページに画鋲で刺したような小さな丸い穴が開いているのを見つけたことはないでしょうか。もしそのような穴を見つけたらそれは紙魚ではなくシバンムシという甲虫の仕業である可能性が高いです。シバンムシはその名の通り死の番人という不吉な呼び名を持っていますがこれは英名のデスウォッチビートルに由来しており静寂の中でカチカチと音を立てて仲間を呼ぶ習性が死を刻む時計の音に例えられたためだと言われています。日本で古書や乾燥食品に被害を与えるのは主にフルホンシバンムシやジンサンシバンムシといった種類で体長は二ミリメートルから三ミリメートルほどの丸みを帯びた赤褐色の小さな虫です。紙魚が紙の表面を削るように食べるのに対しシバンムシは幼虫が本の中身をトンネル状に掘り進んで食べるため被害は深刻で本の構造そのものを破壊してしまいます。彼らは紙だけでなく糊や革そして畳や乾燥麺やペットフードなどあらゆる乾燥した植物質のものを食べる雑食性があり一度家の中に侵入すると発生源を特定するのが難しい厄介な害虫でもあります。シバンムシの成虫は五月から十月にかけて発生し活発に飛び回るため窓や網戸の隙間から侵入してくることもあれば購入した古書や食品に紛れ込んで持ち込まれることもあります。もし本に被害が見つかった場合その本の中にはまだ幼虫や成虫が潜んでいる可能性が高いため被害を受けた本を隔離しビニール袋に入れて密封することが先決です。軽度の被害であればエアダスターなどで虫を吹き飛ばしたりピンセットで取り除いたりすることも可能ですが本の中に深く潜り込んでいる場合は紙魚対策と同様に冷凍処理を行うのが最も確実で本へのダメージも少ない方法です。またシバンムシを誘引するフェロモントラップも市販されており発生状況をモニタリングするために設置するのも有効です。しかし根本的な解決のためには発生源を断つことが不可欠です。本棚だけでなくキッチンにある使いかけの小麦粉やパスタの袋かつお節や香辛料などが彼らの巣窟になっていないか点検しましょう。意外な盲点としてドライフラワーや漢方薬そして畳の藁床なども発生源となり得ます。シバンムシは二十五度以上の気温と六十パーセント以上の湿度を好むためエアコンによる除湿や換気を行うことは紙魚対策と同様に有効ですが彼らは乾燥した環境にもある程度耐性があるため油断は禁物です。大切な本を守るためには定期的に本を手に取りパラパラとめくって風を通すことそして本棚の周りに食べカスや埃が溜まらないように清潔を保つことが基本となります。小さな穴一つが大切な蔵書を崩壊させる入り口となることを認識し日頃からの観察とケアを怠らないようにしたいものです。
本に丸い穴を空けるシバンムシの正体と撃退法